その日・・・・・・
朝からそわそわして落ち着かない。
胸のあたりがなんとなくもやもやと暖かく、
頭の中がふわふわとした気分と言ったほうがいいのだろうか?!
彼女と会うときはいつもこんな気持ちになる。
青く染まった胸のキャンパスに文字を描くとするなら
甘酸っぱい・・嬉しい・・切ない・・。
こんな文字か浮かぶ・・。
彼女の名はキャシー。
学生時代の同級生。
小柄でくりっとした瞳が印象的で笑うと菊池桃子を彷彿させる。
当時はクラスのアイドルだった。
クラスではあまり目立たないおいらだったが
こっそりと彼女に恋焦がれ心をときめかせた一人だった。
何度も告白しようか思ったけど臆病なので結局はできず。
切なくて心が張り裂けそうになった夜・・
母親に
「銭湯に行ってくるわ!」と言い残し・・・
ありったけの10円玉を握り締め公衆電話に
走ったこともあったっけ。
結局彼女の家のダイヤルを回すことはできなかったけど・・
文化祭のファイアーストームでフォークダンス・・・・
そのとき初めて握った彼女の手がいまだに忘れられない。
そんなキャシーと卒業してひょんなきっかけで偶然再会。
この世に神はいるものだ。
ちょっと大人になったおいらは勇気を出してディナーのお誘い。
困惑気味の彼女だったがOKの返事をもらい
以来、年に1~2度食事をする間柄に。
ただしキャシーはそんな昔のおいらの思いなんて
知る由もなし・・。
そんなキャシーと19時に日航ホテル前で待ち合わせ。
そのホテルの裏側にとびっきりのフレンチお店があるのだ。
今日はそのお店で少し遅れた彼女のお誕生日のお祝いである。
19時にはまだ30分前・・
待ち合わせのホテル前で彼女の靴音を探す。
会いたい気持ちが刻む時計の音を遅く感じさせる・・。
まだまだ約束の時間にはほど遠い・・
約束時間ちょうど・・
帰宅途中のサラリーマンが往来するその影に
彼女の笑顔を発見。
泉が沸いたように乾いた心が潤う。
「ミッキー!!待った?」
彼女はおいらのことをミッキーと呼ぶ。
「ううん・・キャシー、今来たところさ!」
30分前から待ってたなんてけっして言わないおいら・・。
今来たように笑顔でふるまう。
ほどなくお店の方向に・・。
ほんとうは肩を並べ手をつなぎ歩きたいのだけれど
少しキャシーの前を歩きながらよそよそしく店に向かう。
数分歩くとそこにはミニエッフェル塔。
このお店の目印だ。
お店の名前は「ラ・ヴィーニュ (La Vigne)」
さりげなく、さりとてアットホームで存在感がある
知る人ぞ知る隠れ家的なフレンチのお店。
大切な人との時間、特別な日には是非覚ええておきたい
素敵なお店。
専用階段を降りて玄関に向かう。
いつもキャシーを連れて行くお店はお洒落度を意識して
選んでるつもりだけれどどことなしに親父のにおい・・。
センスのないおいら・・。
そんなお店にしか連れていったことがないのだ。
でも、今日こそは!
お店に入った瞬間キャシーの顔がほころぶ。
ひゃっほ~ぉ!!
今回は名誉挽回??!!
それともキャシーの顔がほころんだ理由は
出迎えてくださったシェフが半端じゃない
男前だからかな・・・(涙)
シェフの小田桐大輔さん。
男が嫉妬するぐらい男前シェフ。
その小田桐シェフに案内されて奥のテーブル席に腰をおろす。
実は本日はキャシーの誕生日のお祝い・・
その旨を告げるとシェフがお勧めのコースをセレクト。
コース内容の変更も好き嫌いが意外と多い
キャシーのオーダーを笑顔で快諾。
しばらくしてオードブルが登場・・。
料理のレイアウト、ルックスがなんとも美しい。
お皿にさり気なく散らされてるソースがお洒落度満開。
ホワイトコーンのスープ、サーモンのテリーヌ、
ヒラメのカルパッチョ、生ハムのサラダ・・・。
ホワイトコーンの冷製スープが美味すぎてたまらん。
しかし・・・
確かに素敵な料理だけれど飲むアルコールとなると
フランス料理にはやはりワインかな・・
キャシーは当然ワインをオーダー。
シェフおすすめのドイツワイン。
でもポン酒好きなおいらはやっぱりポン酒が飲みたい・・・。
さすがにフレンチのお店にはポン酒があっても
おいらのようなポン酒変態が好む地酒なんてないだろう・・
そう思いながらシェフに地酒ありますか??と
おそるおそる聞いてみると
「おいしい地酒がたくさんありますよ!」と笑顔。
その笑顔をみておいらも満面の笑顔。
実はこのラビーニュ、おいしいポン酒も飲めるんです。
シェフの小田桐さんは休みになるといろんな蔵元さんに行って
利き酒をするぐらいの大の日本酒ファン。
このラビーニュでも年に数回、フレンチとポン酒の会が
開催されているんです。
「じゃ、料理に合わせてシェフお勧めのポン酒お願いします!」
とオーダーするとオードブルにセレクトしてくださったのは
山鶴の純米大吟醸。
ワイングラスに入って登場するのがさすがフレンチお店です。
その山鶴・・
ほんのり香る麹花の香りが料理と絶妙にマッチ。
奥行きのある味わいもぴったりです。
しかし今日はキャシーのお誕生日。
ポン酒と料理の相性にうつつをぬかすのはご法度。
飲兵衛に変身しないように素敵な会話で
エスコートしなければ・・。。
キャシーもワインと素敵な料理に今のところご満悦の様子。
次の料理の前に自家製パンで軽くお口直し。
このパン、とっても素朴な味わい。
でも小麦の旨さがしっかり詰まった本格的な
ベーカーリーの味わい。
思わずお変わり・・・
続いてホタテ貝のスフレ仕立て。
まさかこれがホタテ貝なんて!?
見た目じゃまったくわかりません・・
一口食べると貝の旨みが口一杯にひろがりまさしくホタテ。
でも食感がいつものホタテとまったく違う。
ふわふわさくさく!!
それもそのはず、ホタテをムース状にして卵と和えて
オーブン?で焼いてあるそうです。
これ「ど絶!」の旨さです。
そしてホタテにあわされているブールブランソース。
これが酒欲をそそります。
こんな食感と味わいのホタテは生まれて初めて食べました。
と言うかおっさんの行く居酒屋ではけっして味わえない一品。
シェフがセレクトしてくれた七本槍の純米酒と絶妙!
すいすい飲めます。
だんだんいつもの飲兵衛に変身しつつあるおいら・・・
続いてメインのシャラン産仔鴨のアーモンド衣焼き。
ソースは赤ワインベース。
味わいはまるで牛肉のよう。
本来ならばやはり赤ワインが似合うのだろうけど
シェフのセレクトで月の桂 純米。
どうしても京都のお酒と言うのは女酒をイメージしてしまう・・。
でもこの月の桂 純米。
どしっとしてこの仔鴨のアーモンド衣焼きと絶妙のマリアージュ。
邪魔することなく、しかしけっして負けてない味わい。
シェフのセレクトはさすがだ。
あまりのベストマッチに飲兵衛の本性が出始めたおいらは
ポン酒の追加オーダー。
運ばれてきたのは都美人 雲のごとく。
「どしっとした山廃」と言う感じではないけれど
旨みとコク、そして深みはさすが山廃。
冷たく頂いたが燗も是非飲んでみたい味わい。
適度な酸が赤ワインソースとうまく絡む。
ここまでくるとキャシーとの会話よりも
小田桐シェフとのポン酒談話が弾んでしまう・・。
おー!!キャシーごめんよ・・・
これが飲兵衛の性なんだ・・。
でも、そんな雰囲気を察知した小田桐シェフ。
キャシーを退屈させないように絶妙なエスコート。
さすが!気遣いもプロだ。
いつもはあまり飲まないキャシーだが
ついつい2杯目のワインを。
彼女の顔がいつもよりも艶ぽく感じる。
いいね~!!
そしてころあいをみて
キャシーのお誕生日をお祝いするメッセージが書かれた
素敵なお皿がテーブルに。
キュートに「Bon anniversary」と書かれたお皿には
美しくデザートが飾られている。
「Bon anniversary」・・特別な記念日??!!
直訳するとこんな感じになるのだろうか?
歳を重ねたキャシーにはハッピーバースデイよりも
大人ぽくて良い言葉だ。
さすがにこのお皿が出てきたらポン酒の追加オーダーは
NGだろう・・・
その後はおいしいデザートをゆっくり堪能して
2時間半ほどのBon anniversaryは終了。
お店を後に。
いつまでも2人を見送ってくださる小田桐シェフ。
気遣いと優しさが素晴らしい。
小田桐シェフ、本日はいろいろありがとうございました!
でもキャシーが小田桐シェフに惚れたら困るなぁ。
そんな事を考えながら行きしと同じように
互い違いに並び駅への道に。
でも途中・・
急に車が飛び出してきたのであわててキャシーの手を握る。
すぐに離したが数十年前のフォークダンスの思い出が
脳裏をよぎる・・。
神はやはりいるものだ。
キャシーは何事もなかった表情でまた歩き出す。
数分後、駅に到着。
「じゃ~、またね!」とキャシー。
その後ろ姿を見送るおいら。
あ・・今日もプラトニックで終わってしまった・・。
でもそんなおいらがおいらは好きだ。
悔しいからもう一軒!!
愛する日本酒をがっつり飲んで日本酒を抱いてやる。
やっぱし・・・おいらにはポン酒が一番だ。
最後まで読んでくださったあなた!!
おおきに!!
この物語は一部フィクション。
でもお店、料理、お酒、そして小田桐さんは本物です!!
【ラビーニュ La Vigne】
住所 大阪府大阪市中央区西心斎橋1-10-3
エースビルB1F
電話番号 06-6251-1630
営業時間 11:30~15:00(L.O.14:30) 17:30~02:00(L.O.01:30)
定休日 無休 (年末年始除く)
アクセス 地下鉄御堂筋線心斎橋駅 8番出口 徒歩1分
/長堀鶴見緑地線心斎橋駅 8番出口 徒歩1分
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